「あの課長、口癖うざい」 — Epoche C1
場面設定: 東京・茅場町の居酒屋、夜。モノマネ得意のたかしと、共感力高めのゆうこ。一日の終わりに上司の話で盛り上がる。 あのさあ、課長今日も言ってたよ。「要は何が言いたいかと言うと」「結局のところ」。一回の会議で十回は出てくるんだけど。 やめてやめて、たかし君のモノマネ似すぎ。声まで寄せるのずるいって。お酒吹きそうになったじゃん。 でもさ、あれ言われ始めると、こっちの集中力が一気に切れるんだよね。「結局のところ」って言われて、結局の話が来たためしがないし。 分かる。私、最近は会議中にひそかに数えてるよ、「結局のところ」が何回出るか。今日は十四回。 ゆうこさん、そういう所、好きだよ。やり過ごすコツとして優秀。俺は最近、「来た来た」って心の中で実況してる。 実況、いいね。今度メモ用紙に正の字で記録しよう。会議が終わる頃には、今日の課長の調子が分かるかもしれない。 でもね、本気で嫌いなわけじゃないんだよ。仕事の判断は早いし、責任もちゃんと取る人だし。口癖だけが惜しい。 それな。指示は的確だし、私たちが残業してたら早く帰れって言ってくれるしね。憎めない人なんだよ。 ……あのさ、ふと思ったんだけど、課長、家では奥さんに「あなたの『結局のところ』、結局のところいつ終わるの」って言われてるかもしれないよ。 それ想像したら、ちょっと哀れになってきた。家でも会社でも数えられてるって、なかなか辛いものだから。今度の会議は黙って聞いてあげようか。 解説: モノマネで始まった愚痴が、課長への愛着、そして家庭での姿への想像にまで届く。職場での嗤いが家庭という別の場面と接続することで、批判の鋭さがふっと哀れみに変わる。