Man'yōshū, Volume 10 — Ōtomo no Yakamochi and others
万葉集/第十巻 ← 第九巻 第十一巻 → 万葉集 第十巻 第十巻 [歌番号] 10/1812 [題詞]春雜歌 [原文]久方之 天芳山 此夕 霞霏d 春立下 [訓読]ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも [仮名]ひさかたの あめのかぐやま このゆふへ かすみたなびく はるたつらしも [左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出) [校異]歌 [西] 謌 [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 飛鳥 地名 枕詞 季節 [訓異]ひさかたの[寛], あめのかぐやま,[寛]あまのかくやま, このゆふへ[寛], かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, はるたつらしも[寛], [歌番号] 10/1813 [題詞]なし [原文]巻向之 桧原丹立流 春霞 欝之思者 名積米八方 [訓読]巻向の桧原に立てる春霞おほにし思はばなづみ来めやも [仮名]まきむくの ひはらにたてる はるかすみ おほにしおもはば なづみこめやも [左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出) [校異]なし [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 奈良 地名 季節 [訓異]まきむくの,[寛]まきもくの, ひはらにたてる[寛], はるかすみ[寛], おほにしおもはば,[寛]くれしおもひは, なづみこめやも,[寛]なつみけめやも, [歌番号] 10/1814 [題詞]なし [原文]古 人之殖兼 杉枝 霞<霏>d 春者来良之 [訓読]いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞たなびく春は来ぬらし [仮名]いにしへの ひとのうゑけむ すぎがえに かすみたなびく はるはきぬらし [左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出) [校異]<> -> 霏 [西(左書)][元][類][紀] / 之 [元][類](塙) 芝 [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 植物 季節 [訓異]いにしへの[寛], ひとのうゑけむ[寛], すぎがえに,[寛]すきかゑに, かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, はるはきぬらし[寛], [歌番号] 10/1815 [題詞]なし [原文]子等我手乎 巻向山丹 春去者 木葉凌而 霞霏d [訓読]子らが手を巻向山に春されば木の葉しのぎて霞たなびく [仮名]こらがてを まきむくやまに はるされば このはしのぎて かすみたなびく [左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出) [校異]凌 [元][類] 陵 [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 奈良 地名 枕詞 季節 [訓異]こらがてを,[寛]こらかてを, まきむくやまに,[寛]まきもくやまに, はるされば,[寛]はるされは, このはしのぎて,[寛]このはしのきて, かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, [歌番号] 10/1816 [題詞]なし [原文]玉蜻 夕去来者 佐豆人之 弓月我高荷 霞霏d [訓読]玉かぎる夕さり来ればさつ人の弓月が岳に霞たなびく [仮名]たまかぎる ゆふさりくれば さつひとの ゆつきがたけに かすみたなびく [左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出) [校異]なし [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 桜井 奈良 地名 枕詞 季節 [訓異]たまかぎる,[寛]かけろふの, ゆふさりくれば,[寛]ゆふさりくれは, さつひとの[寛], ゆつきがたけに,[寛]ゆつきかたけに, かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, [歌番号] 10/1817 [題詞]なし [原文]今朝去而 明日者来牟等 云子鹿丹 旦妻山丹 霞霏d [訓読]今朝行きて明日には来なむと云子鹿丹朝妻山に霞たなびく [仮名]けさゆきて あすにはきなむと **** あさづまやまに かすみたなびく [左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出) [校異]牟 [元][類] 年 / 鹿丹 [元] 庶 [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 御所市 奈良県 地名 季節 [訓異]けさゆきて,[寛]けふゆきて, あすにはきなむと,[寛]あすはこむといふ, * ***,[寛]こかに, あさづまやまに,[寛]あさつまやまに, かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, [歌番号] 10/1818 [題詞]なし [原文]子等名丹 關之宜 朝妻之 片山木之尓 霞多奈引 [訓読]子らが名に懸けのよろしき朝妻の片山崖に霞たなびく [仮名]こらがなに かけのよろしき あさづまの かたやまきしに かすみたなびく [左注]右柿本朝臣人麻呂歌集出 [校異]歌 [西] 謌 [事項]春雑歌 作者:柿本人麻呂歌集 非略体 御所市 奈良県 地名 季節 序詞 [訓異]こらがなに,[寛]これかなに, かけのよろしき,[寛]つけのよろしき, あさづまの,[寛]あさつまの, かたやまきしに[寛], かすみたなびく,[寛]かすみたなひく, [歌番号] 10/1819 [題詞]詠鳥 [原文]打霏 春立奴良志 吾門之 柳乃宇礼尓 鴬鳴都 [訓読]うち靡く春立ちぬらし我が門の柳の末に鴬鳴きつ [仮名]うちなびく はるたちぬらし わがかどの やなぎのうれに うぐひすなきつ [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 季節 植物 動物 [訓異]うちなびく,[寛]うちなひき, はるたちぬらし[寛], わがかどの,[寛]わかかとの, やなぎのうれに,[寛]やなきのうれに, うぐひすなきつ,[寛]うくひすなきつ, [歌番号] 10/1820 [題詞](詠鳥) [原文]梅花 開有岳邊尓 家居者 乏毛不有 鴬之音 [訓読]梅の花咲ける岡辺に家居れば乏しくもあらず鴬の声 [仮名]うめのはな さけるをかへに いへをれば ともしくもあらず うぐひすのこゑ [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 植物 動物 季節 [訓異]うめのはな[寛], さけるをかへに[寛], いへをれば,[寛]いへゐせは, ともしくもあらず,[寛]ともしくもあらし, うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこゑ [歌番号] 10/1821 [題詞](詠鳥) [原文]春霞 流共尓 青柳之 枝<喙>持而 鴬鳴毛 [訓読]春霞流るるなへに青柳の枝くひ持ちて鴬鳴くも [仮名]はるかすみ ながるるなへに あをやぎの えだくひもちて うぐひすなくも [左注]なし [校異]啄 -> 喙 [元][類] [事項]春雑歌 植物 動物 季節 [訓異]はるかすみ[寛], ながるるなへに,[寛]なかるるなへに, あをやぎの,[寛]あをやきの, えだくひもちて,[寛]えたくひもちて, うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも, [歌番号] 10/1822 [題詞](詠鳥) [原文]吾瀬子乎 莫越山能 喚子鳥 君喚變瀬 夜之不深刀尓 [訓読]我が背子を莫越の山の呼子鳥君呼び返せ夜の更けぬとに [仮名]わがせこを なこしのやまの よぶこどり きみよびかへせ よのふけぬとに [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 地名 動物 枕詞 [訓異]わがせこを,[寛]わかせこを, なこしのやまの[寛], よぶこどり,[寛]よふことり, きみよびかへせ,[寛]きみよひかへせ, よのふけぬとに[寛], [歌番号] 10/1823 [題詞](詠鳥) [原文]朝井代尓 来鳴<杲>鳥 汝谷文 君丹戀八 時不終鳴 [訓読]朝ゐでに来鳴く貌鳥汝れだにも君に恋ふれや時終へず鳴く [仮名]あさゐでに きなくかほどり なれだにも きみにこふれや ときをへずなく [左注]なし [校異]果 -> 杲 [類][矢] [事項]春雑歌 動物 恋情 [訓異]あさゐでに,[寛]あさゐてに, きなくかほどり,[寛]きなくかほとり, なれだにも,[寛]なれたにも, きみにこふれや[寛], ときをへずなく,[寛]ときをへすなく, [歌番号] 10/1824 [題詞](詠鳥) [原文]冬隠 春去来之 足比木乃 山二文野二文 鴬鳴裳 [訓読]冬こもり春さり来ればあしひきの山にも野にも鴬鳴くも [仮名]ふゆこもり はるさりくれば あしひきの やまにものにも うぐひすなくも [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 枕詞 動物 季節 [訓異]ふゆこもり[寛], はるさりくれば,[寛]はるさりくらし, あしひきの[寛], やまにものにも[寛], うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも, [歌番号] 10/1825 [題詞](詠鳥) [原文]紫之 根延横野之 春野庭 君乎懸管 鴬名雲 [訓読]紫草の根延ふ横野の春野には君を懸けつつ鴬鳴くも [仮名]むらさきの ねばふよこのの はるのには きみをかけつつ うぐひすなくも [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 大阪市 地名 動物 植物 枕詞 季節 [訓異]むらさきの[寛], ねばふよこのの,[寛]ねはふよこのの, はるのには[寛], きみをかけつつ[寛], うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも, [歌番号] 10/1826 [題詞](詠鳥) [原文]春之<在>者 妻乎求等 鴬之 木末乎傳 鳴乍本名 [訓読]春されば妻を求むと鴬の木末を伝ひ鳴きつつもとな [仮名]はるされば つまをもとむと うぐひすの こぬれをつたひ なきつつもとな [左注]なし [校異]去 -> 在 [元][類][紀] [事項]春雑歌 季節 動物 [訓異]はるされば,[寛]はるされは, つまをもとむと[寛], うぐひすの,[寛]うくひすの, こぬれをつたひ,[寛]こすゑをつたひ, なきつつもとな[寛], [歌番号] 10/1827 [題詞](詠鳥) [原文]春日有 羽買之山従 <狭>帆之内敝 鳴徃成者 孰喚子鳥 [訓読]春日なる羽がひの山ゆ佐保の内へ鳴き行くなるは誰れ呼子鳥 [仮名]かすがなる はがひのやまゆ さほのうちへ なきゆくなるは たれよぶこどり [左注]なし [校異]猿 -> 狭 [元][類] [事項]春雑歌 奈良 春日 地名 動物 恋情 [訓異]かすがなる,[寛]かすかなる, はがひのやまゆ,[寛]はかひのやまゆ, さほのうちへ[寛], なきゆくなるは[寛], たれよぶこどり,[寛]たれよふことり, [歌番号] 10/1828 [題詞](詠鳥) [原文]不答尓 勿喚動曽 喚子鳥 佐保乃山邊乎 上下二 [訓読]答へぬにな呼び響めそ呼子鳥佐保の山辺を上り下りに [仮名]こたへぬに なよびとよめそ よぶこどり さほのやまへを のぼりくだりに [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 佐保 奈良 地名 動物 [訓異]こたへぬに[寛], なよびとよめそ,[寛]なよひとよみそ, よぶこどり,[寛]よふことり, さほのやまへを[寛], のぼりくだりに,[寛]のほりくたりに, [歌番号] 10/1829 [題詞](詠鳥) [原文]梓弓 春山近 家居之 續而聞良牟 鴬之音 [訓読]梓弓春山近く家居れば継ぎて聞くらむ鴬の声 [仮名]あづさゆみ はるやまちかく いへをれば つぎてきくらむ うぐひすのこゑ [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 枕詞 動物 季節 [訓異]あづさゆみ,[寛]あつさゆみ, はるやまちかく[寛], いへをれば,[寛]いへゐして, つぎてきくらむ,[寛]つきてきくらむ, うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこえ, [歌番号] 10/1830 [題詞](詠鳥) [原文]打靡 春去来者 小竹之末丹 尾羽打觸而 鴬鳴毛 [訓読]うち靡く春さり来れば小竹の末に尾羽打ち触れて鴬鳴くも [仮名]うちなびく はるさりくれば しののうれに をはうちふれて うぐひすなくも [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 植物 動物 季節 [訓異]うちなびく,[寛]うちなひき, はるさりくれば,[寛]はるさりくれは, しののうれに,[寛]しののめに, をはうちふれて[寛], うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも, [歌番号] 10/1831 [題詞](詠鳥) [原文]朝霧尓 之<努>々尓所沾而 喚子鳥 三船山従 喧渡所見 [訓読]朝霧にしののに濡れて呼子鳥三船の山ゆ鳴き渡る見ゆ [仮名]あさぎりに しののにぬれて よぶこどり みふねのやまゆ なきわたるみゆ [左注]なし [校異]怒 -> 努 [元][類] [事項]春雑歌 吉野 地名 動物 季節 叙景 [訓異]あさぎりに,[寛]あさきりに, しののにぬれて,[寛]しぬぬにぬれて, よぶこどり,[寛]よふことり, みふねのやまゆ,[寛]みふねのやまに, なきわたるみゆ[寛], [歌番号] 10/1832 [題詞]<詠雪> [原文]打靡 春去来者 然為蟹 天雲霧相 雪者零管 [訓読]うち靡く春さり来ればしかすがに天雲霧らひ雪は降りつつ [仮名]うちなびく はるさりくれば しかすがに あまくもきらひ ゆきはふりつつ [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 季節 [訓異]うちなびく,[寛]うちなひき, はるさりくれば,[寛]はるさりくれは, しかすがに,[寛]しかすかに, あまくもきらひ,[寛]あまくもきりあひ, ゆきはふりつつ[寛], [歌番号] 10/1833 [題詞](詠雪) [原文]梅花 零覆雪乎 褁持 君令見跡 取者消管 [訓読]梅の花降り覆ふ雪を包み持ち君に見せむと取れば消につつ [仮名]うめのはな ふりおほふゆきを つつみもち きみにみせむと とればけにつつ [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 植物 季節 [訓異]うめのはな[寛], ふりおほふゆきを,[寛]ふりををふゆきを, つつみもち,[寛]つつみもて, きみにみせむと[寛], とればけにつつ,[寛]とれはきへつつ, [歌番号] 10/1834 [題詞](詠雪) [原文]梅花 咲落過奴 然為蟹 白雪庭尓 零重管 [訓読]梅の花咲き散り過ぎぬしかすがに白雪庭に降りしきりつつ [仮名]うめのはな さきちりすぎぬ しかすがに しらゆきにはに ふりしきりつつ [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 植物 季節 [訓異]うめのはな[寛], さきちりすぎぬ,[寛]さきちりすきぬ, しかすがに,[寛]しかすかに, しらゆきにはに[寛], ふりしきりつつ,[寛]ふりかさねつつ, [歌番号] 10/1835 [題詞](詠雪) [原文]今更 雪零目八方 蜻火之 燎留春部常 成西物乎 [訓読]今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを [仮名]いまさらに ゆきふらめやも かぎろひの もゆるはるへと なりにしものを [左注]なし [校異]なし [事項]春雑歌 季節 [訓異]いまさらに[寛], ゆきふらめやも[寛], かぎろひの,[寛]かけろふの, もゆるはるへと,[寛]もゆるはるひと