Man'yōshū, Volume 14 — Ōtomo no Yakamochi
万葉集/第十四巻 ← 第十三巻 第十五巻 → 万葉集 第十四巻 第十四巻 [歌番号] 14/3348 [題詞]東歌 [原文]奈都素妣久 宇奈加美我多能 於伎都渚尓 布袮波等<杼>米牟 佐欲布氣尓家里 [訓読]夏麻引く海上潟の沖つ洲に船は留めむさ夜更けにけり [仮名]なつそびく うなかみがたの おきつすに ふねはとどめむ さよふけにけり [左注]右一首上総國歌 [校異]抒 -> 杼 [類][古][京] [事項]東歌 千葉県 枕詞 市原市 地名 [訓異]なつそびく,[寛]なつそひく, うなかみがたの,[寛]うなかみかたの, おきつすに[寛], ふねはとどめむ,[寛]ふねはととめむ, さよふけにけり[寛], [歌番号] 14/3349 [題詞]なし [原文]可豆思加乃 麻萬能宇良<未>乎 許具布祢能 布奈妣等佐和久 奈美多都良思母 [訓読]葛飾の真間の浦廻を漕ぐ船の船人騒く波立つらしも [仮名]かづしかの ままのうらみを こぐふねの ふなびとさわく なみたつらしも [左注]右一首下総國歌 [校異]末 -> 未 [万葉集古義] [事項]東歌 千葉県 地名 葛飾区 市原市 景物 [訓異]かづしかの,[寛]かつしかの, ままのうらみを,[寛]ままのうらまを, こぐふねの,[寛]こくふねの, ふなびとさわく,[寛]ふなひとさわく, なみたつらしも[寛], [歌番号] 14/3350 [題詞]なし [原文]筑波祢乃 尓比具波麻欲能 伎奴波安礼杼 伎美我美家思志 安夜尓伎保思母 [訓読]筑波嶺の新桑繭の衣はあれど君が御衣しあやに着欲しも [仮名]つくはねの にひぐはまよの きぬはあれど きみがみけしし あやにきほしも [左注]或本歌曰 多良知祢能 又云 安麻多伎保思母 / (右二首常陸國歌) [校異]なし [事項]東歌 茨城県 筑波山 地名 恋愛 新婚 婚姻 [訓異]つくはねの[寛], にひぐはまよの,[寛]にひくはまゆの, きぬはあれど,[寛]きぬはあれと, きみがみけしし,[寛]きみかみけしし, あやにきほしも[寛], [歌番号] 14/3350 S [題詞]或本歌曰 又云 [原文]多良知祢能 安麻多伎保思母 [訓読]たらちねの あまた着欲しも [仮名]たらちねの あまたきほしも [左注](右二首常陸國歌) [校異]なし [事項]東歌 茨城県 異伝 筑波山 新婚 恋愛 [訓異]たらちねの[寛], あまたきほしも[寛], [歌番号] 14/3351 [題詞]なし [原文]筑波祢尓 由伎可母布良留 伊奈乎可母 加奈思吉兒呂我 尓努保佐流可母 [訓読]筑波嶺に雪かも降らるいなをかも愛しき子ろが布乾さるかも [仮名]つくはねに ゆきかもふらる いなをかも かなしきころが にのほさるかも [左注]右二首常陸國歌 [校異]なし [事項]東歌 茨城県 筑波山 地名 恋情 景物 [訓異]つくはねに[寛], ゆきかもふらる[寛], いなをかも[寛], かなしきころが,[寛]かなしきころか, にのほさるかも[寛], [歌番号] 14/3352 [題詞]なし [原文]信濃奈流 須我能安良能尓 保登等藝須 奈久許恵伎氣<婆> 登伎須疑尓家里 [訓読]信濃なる須我の荒野に霍公鳥鳴く声聞けば時過ぎにけり [仮名]しなぬなる すがのあらのに ほととぎす なくこゑきけば ときすぎにけり [左注]右一首信濃國歌 [校異]波 -> 婆 [紀][細] [事項]東歌 長野県 地名 真田町 菅平 動物 別離 農事 女歌 [訓異]しなぬなる,[寛]しなのなる, すがのあらのに,[寛]すかのあらのに, ほととぎす,[寛]ほとときす, なくこゑきけば,[寛]なくこゑきけは, ときすぎにけり,[寛]ときすきにけり, [歌番号] 14/3353 [題詞]相聞 [原文]阿良多麻能 伎倍乃波也之尓 奈乎多弖天 由伎可都麻思自 移乎佐伎太多尼 [訓読]あらたまの伎倍の林に汝を立てて行きかつましじ寐を先立たね [仮名]あらたまの きへのはやしに なをたてて ゆきかつましじ いをさきだたね [左注](右二首遠江國歌) [校異]伎 [類][細](塙) 吉 [事項]東歌 相聞 静岡県 枕詞 地名 浜名市 歌謡 歌垣 民謡 恋愛 [訓異]あらたまの[寛], きへのはやしに[寛], なをたてて[寛], ゆきかつましじ,[寛]ゆきかつましし, いをさきだたね,[寛]いをさきたたに, [歌番号] 14/3354 [題詞]なし [原文]伎倍比等乃 萬太良夫須麻尓 和多佐波太 伊利奈麻之母乃 伊毛我乎杼許尓 [訓読]伎倍人のまだら衾に綿さはだ入りなましもの妹が小床に [仮名]きへひとの まだらぶすまに わたさはだ いりなましもの いもがをどこに [左注]右二首遠江國歌 [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 地名 浜名市 恋愛 歌垣 歌謡 民謡 [訓異]きへひとの[寛], まだらぶすまに,[寛]またらふすまに, わたさはだ,[寛]わたさはた, いりなましもの[寛], いもがをどこに,[寛]いもかをとこに, [歌番号] 14/3355 [題詞]なし [原文]安麻乃波良 不自能之婆夜麻 己能久礼能 等伎由都利奈波 阿波受可母安良牟 [訓読]天の原富士の柴山この暗の時ゆつりなば逢はずかもあらむ [仮名]あまのはら ふじのしばやま このくれの ときゆつりなば あはずかもあらむ [左注](右五首駿河國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 富士山 地名 歌垣 歌謡 民謡 恋愛 [訓異]あまのはら[寛], ふじのしばやま,[寛]ふしのしはやま, このくれの[寛], ときゆつりなば,[寛]ときゆつりなは, あはずかもあらむ,[寛]あはすかもあらむ, [歌番号] 14/3356 [題詞]なし [原文]不盡能祢乃 伊夜等保奈我伎 夜麻治乎毛 伊母我理登倍婆 氣尓餘婆受吉奴 [訓読]富士の嶺のいや遠長き山道をも妹がりとへばけによばず来ぬ [仮名]ふじのねの いやとほながき やまぢをも いもがりとへば けによばずきぬ [左注](右五首駿河國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 富士山 地名 恋愛 [訓異]ふじのねの,[寛]ふしのねの, いやとほながき,[寛]いやとほなかき, やまぢをも,[寛]やまちをも, いもがりとへば,[寛]いもかりとへは, けによばずきぬ,[寛]けによはすきぬ, [歌番号] 14/3357 [題詞]なし [原文]可須美為流 布時能夜麻備尓 和我伎奈婆 伊豆知武吉弖加 伊毛我奈氣可牟 [訓読]霞居る富士の山びに我が来なばいづち向きてか妹が嘆かむ [仮名]かすみゐる ふじのやまびに わがきなば いづちむきてか いもがなげかむ [左注](右五首駿河國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 富士山 地名 恋情 別離 後朝 [訓異]かすみゐる[寛], ふじのやまびに,[寛]ふしのやまへに, わがきなば,[寛]わかきなは, いづちむきてか,[寛]いつちむきてか, いもがなげかむ,[寛]いもかなけかむ, [歌番号] 14/3358 [題詞]なし [原文]佐奴良久波 多麻乃緒婆可里 <古>布良久波 布自能多可祢乃 奈流佐波能其登 [訓読]さ寝らくは玉の緒ばかり恋ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと [仮名]さぬらくは たまのをばかり こふらくは ふじのたかねの なるさはのごと [左注]或本歌曰 麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与 一本歌曰 阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛 / (右五首駿河國歌) [校異]右 -> 古 [西(訂正右書)][類][紀][温] / 久波 [細](塙) 久 [事項]東歌 相聞 静岡県 富士山 地名 恋情 歌謡 民謡 歌垣 [訓異]さぬらくは[寛], たまのをばかり,[寛]たまのをはかり, こふらくは[寛], ふじのたかねの,[寛]ふしのたかねの, なるさはのごと,[寛]なるさはのこと, [歌番号] 14/3358 S1 [題詞]或本歌曰 [原文]麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与 [訓読]ま愛しみ寝らくはしけらくさ鳴らくは伊豆の高嶺の鳴沢なすよ [仮名]まかなしみ ぬらくはしけらく さならくは いづのたかねの なるさはなすよ [左注](右五首駿河國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 地名 伊豆 天城山 尫柜蹋 人目 恋愛 歌垣 民謡 歌謡 [訓異]まかなしみ[寛], ぬらくはしけらく[寛], さならくは,[寛]ならくは, いづのたかねの,[寛]いつのたかねの, なるさはなすよ[寛], [歌番号] 14/3358 S2 [題詞]一本歌曰 [原文]阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛 [訓読]逢へらくは玉の緒しけや恋ふらくは富士の高嶺に降る雪なすも [仮名]あへらくは たまのをしけや こふらくは ふじのたかねに ふるゆきなすも [左注](右五首駿河國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 富士山 地名 恋情 歌垣 民謡 歌謡 [訓異]あへらくは[寛], たまのをしけや[寛], こふらくは[寛], ふじのたかねに,[寛]ふしのたかねに, ふるゆきなすも[寛], [歌番号] 14/3359 [題詞]なし [原文]駿河能宇美 於思敝尓於布流 波麻都豆良 伊麻思乎多能美 波播尓多我比奴 [一云 於夜尓多我比奴] [訓読]駿河の海おし辺に生ふる浜つづら汝を頼み母に違ひぬ [一云 親に違ひぬ] [仮名]するがのうみ おしへにおふる はまつづら いましをたのみ ははにたがひぬ [おやにたがひぬ] [左注]右五首駿河國歌 [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 駿河湾 地名 植物 恋情 異伝 歌謡 歌垣 民謡 [訓異]するがのうみ,[寛]するかのうみ, おしへにおふる[寛], はまつづら,[寛]はまつつら, いましをたのみ[寛], ははにたがひぬ,[寛]ははにたかひぬ, [おやにたがひぬ],[寛]おやにたかひぬ, [歌番号] 14/3360 [題詞]なし [原文]伊豆乃宇美尓 多都思良奈美能 安里都追毛 都藝奈牟毛能乎 <美>太礼志米梅楊 [訓読]伊豆の海に立つ白波のありつつも継ぎなむものを乱れしめめや [仮名]いづのうみに たつしらなみの ありつつも つぎなむものを みだれしめめや [左注]或本歌曰 之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武 / 右一首伊豆國歌 [校異]<> -> 美 [西(右書)][類][紀][細] [事項]東歌 相聞 静岡県 地名 伊豆 女歌 恋情 序詞 [訓異]いづのうみに,[寛]いつのうみに, たつしらなみの[寛], ありつつも[寛], つぎなむものを,[寛]つきなむものを, みだれしめめや,[寛]みたれしめめや, [歌番号] 14/3360 S [題詞]或本歌曰 [原文]之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武 [訓読]白雲の絶えつつも継がむと思へや乱れそめけむ [仮名]しらくもの たえつつも つがむともへや みだれそめけむ [左注]右一首伊豆國歌 [校異]なし [事項]東歌 相聞 静岡県 異伝 女歌 恋情 序詞 [訓異]しらくもの[寛], たえつつも[寛], つがむともへや,[寛]つかむともへや, みだれそめけむ,[寛]みたれそめけむ, [歌番号] 14/3361 [題詞]なし [原文]安思我良能 乎弖毛許乃母尓 佐須和奈乃 可奈流麻之豆美 許呂安礼比毛等久 [訓読]足柄のをてもこのもにさすわなのかなるましづみ子ろ我れ紐解く [仮名]あしがらの をてもこのもに さすわなの かなるましづみ ころあれひもとく [左注](右十二首相模國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 神奈川県 地名 足柄 序詞 恋愛 狩猟 民謡 歌謡 [訓異]あしがらの,[寛]あしからの, をてもこのもに[寛], さすわなの[寛], かなるましづみ,[寛]かなるましつみ, ころあれひもとく[寛], [歌番号] 14/3362 [題詞]なし [原文]相模祢乃 乎美祢見所久思 和須礼久流 伊毛我名欲妣弖 吾乎祢之奈久奈 [訓読]相模嶺の小峰見そくし忘れ来る妹が名呼びて我を音し泣くな [仮名]さがむねの をみねみそくし わすれくる いもがなよびて あをねしなくな [左注]或本歌曰 武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流 / (右十二首相模國歌) [校異]所 [岩波大系](塙)(楓) 可 / <> -> 遊 [西(右書)][元][類][古][紀] [事項]東歌 相聞 神奈川県 地名 丹沢 別離 恋情 異伝 [訓異]さがむねの,[寛]さかみねの, をみねみそくし[寛], わすれくる[寛], いもがなよびて,[寛]いもかなよひて, あをねしなくな,[寛]わをねしなくな, [歌番号] 14/3362 S [題詞]或本歌曰 [原文]武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流 [訓読]武蔵嶺の小峰見隠し忘れ行く君が名懸けて我を音し泣くる [仮名]むざしねの をみねみかくし わすれゆく きみがなかけて あをねしなくる [左注](右十二首相模國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 神奈川県 異伝 地名 別離 恋情 [訓異]むざしねの,[寛]むさしねの, をみねみかくし[寛], わすれゆく[寛], きみがなかけて,[寛]きみかなかけて, あをねしなくる[寛], [歌番号] 14/3363 [題詞]なし [原文]和我世古乎 夜麻登敝夜利弖 麻都之太須 安思我良夜麻乃 須疑乃木能末可 [訓読]我が背子を大和へ遣りて待つしだす足柄山の杉の木の間か [仮名]わがせこを やまとへやりて まつしだす あしがらやまの すぎのこのまか [左注](右十二首相模國歌) [校異]なし [事項]東歌 相聞 神奈川県 女歌 別離 悲別 地名 足柄 掛詞 [訓異]わがせこを,[寛]わかせこを, やまとへやりて[寛], まつしだす,[寛]まつしたす, あしがらやまの,[寛]あしからやまの, すぎのこのまか,[寛]すきのこのまか, [歌番号] 14/3364 [題詞]なし [原文]安思我良能 波I祢乃夜麻尓 安波麻吉弖 實登波奈礼留乎 阿波奈久毛安夜思 [訓読]足柄の箱根の山に粟蒔きて実とはなれるを粟無くもあやし [仮名]あしがらの はこねのやま