自転車のパンク修理 — Epoche B1
場面設定: コペンハーゲン・ノアブロ地区の自転車店、午前。整備士18年のアンダースと、半年間バルブの使い方を知らずにいたライネ。 アンダースさん、おはようございます。前輪がパンクしてしまって、今朝、ほぼ潰れていたんです。修理をお願いします。それと、ついでに新しいタイヤへの交換もお願いできますか。 おはようございます、ライネさん。ちょっと拝見しますね。……んん、前輪を握ってみますね。空気、ゼロじゃないですよ。半分は入っています。バルブを確認させてください。これは仏式バルブですね。 バルブですか。それが何か問題なんですか。 仏式バルブには、上にこの小さなネジが付いているんです。空気を入れる時は、まずこのネジを反時計回りに緩めてから、ポンプを差していただく必要があります。緩めずに押しても、空気は入りません。ライネさん、このネジ、触ったことはありますか。 ……え。そんなネジ、気づいていませんでした。ポンプの口を差して、押すだけでした。 この自転車、購入されたのはいつ頃ですか。 半年前です。空気入れもその時に一緒に買いました。 診断を申し上げます。パンクはしていません。購入時に店員が入れた空気が、6ヶ月かけて自然に半分まで抜けただけです。ライネさんが半年間、入れようとしてきた空気は、全部バルブの外に漏れていました。タイヤは新品同様で、交換も修理も不要です。 ……穴があったらどうしようって思っていて、修理費も覚悟していたんです。今、一番恥ずかしいです。 デンマークでは仏式バルブが多くて、ご存じない方は、ライネさんで今月7人目ですよ。実演しますね。ネジを緩めて、ポンプを差して、押す、終わったらネジを締める。月に一回はやるようにしてください。料金はいただきません。 解説: 「パンク」と思い込んでいた半年間、空気を一度も入れていなかった本音の漏れ+皮肉。「料金いただきません」という整備士の温情で、恥ずかしさが学びに昇華される自転車文化の良心。