ネット回線の契約 — Epoche B1
場面設定: ヤンゴン・バハン地区の通信ショップ、午後。住所と物理敷設を冷静に照合する店員テインテインと、「全市光対応」の広告を信じてきたチョーミン。 テインテインさん、一ギガ光の最高プランで契約をお願いします。ゲームも動画も全部使いたいんです。広告に「全市光対応」って書いてありました。 かしこまりました、チョーミン様。一点お伺いしたいのですが、ご住所を詳しく教えていただけますか。光回線の敷設エリアの確認が必要なんです。 バハン地区のサヤサン通り十八番地、築四十年の木造アパートです。 お調べいたします。……サヤサン通り十八番地は光ファイバー未敷設のエリアで、銅線ADSLの上限五十メガまでの地域となっております。光は物理的に不可能で、二〇二七年に敷設予定ですが、現時点では未定です。 ……え、マジですか。広告には「ヤンゴン全市、光対応」って大きく書いてあったじゃないですか。 広告の正確な表現は、小字の注釈で「バハン地区の大半に対応」となっております。お客様のご住所はその範囲外ということになります。ご期待に添えず申し訳ございません。 ……じゃあ、どうすればいいんですか。 ご提案を三つさせてください。第一に、4Gの家庭用ルーターで月百ギガの契約。ミャンマーでは光五十メガより通信が安定するという実例も多いんです。 4Gのほうが意外と速いんですか。 第二に、光敷設済みエリアへの引っ越しもご検討、本気度次第ということになります。第三に、銅線ADSLで今五十メガを契約いただいて、来年敷設後に光へ無料切り替えするキャンペーンへのご加入。ゲームや動画がメインでしたら、4G百ギガが一番のおすすめということになるはずです。 解説: 「最高プラン」の希望が物理的に不可能、という本音の漏れ+拒否ではなく代替三案を出す店員の予想外の返し。広告の小字は誰のためにあるか――生活インフラの広告倫理を一行で問う。