Man'yōshū, Volume 19 — Ōtomo no Yakamochi
[歌番号]19/4139 [題詞]天平勝寶二年三月一日之暮眺矚春苑桃李花<作>二首 [原文]春苑 紅尓保布 桃花 下<照>道尓 出立D嬬 [訓読]春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子 [仮名]はるのその くれなゐにほふ もものはな したでるみちに いでたつをとめ [左注]なし [校異]作歌 -> 作 [元][文][紀] / 昭 -> 照 [元][類][紀] [事項]天平勝宝2年3月1日 年紀 作者:大伴家持 植物 絵画 高岡 富山 [訓異]はるのその[寛], くれなゐにほふ[寛], もものはな[寛], したでるみちに,[寛]したてるみちに, いでたつをとめ,[寛]いてたてるいも, [歌番号]19/4140 [題詞](天平勝寶二年三月一日之暮眺矚春苑桃李花<作>二首) [原文]吾園之 李花可 庭尓落 波太礼能未 遺在可母 [訓読]吾が園の李の花か庭に散るはだれのいまだ残りたるかも [仮名]わがそのの すもものはなか にはにちる はだれのいまだ のこりたるかも [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月1日 年紀 作者:大伴家持 植物 高岡 富山 [訓異]わがそのの,[寛]わかそのの, すもものはなか[寛], にはにちる[寛], はだれのいまだ,[寛]はたれのいまた, のこりたるかも[寛], [歌番号]19/4141 [題詞]見飜翔鴫作歌一首 [原文]春儲而 <物>悲尓 三更而 羽振鳴志藝 誰田尓加須牟 [訓読]春まけてもの悲しきにさ夜更けて羽振き鳴く鴫誰が田にか住む [仮名]はるまけて ものがなしきに さよふけて はぶきなくしぎ たがたにかすむ [左注]なし [校異]<> -> 物 [西(右書)][元][類][紀] [事項]天平勝宝2年3月1日 年紀 作者:大伴家持 動物 望郷 高岡 富山 [訓異]はるまけて[寛], ものがなしきに,[寛]ものかなしきに, さよふけて[寛], はぶきなくしぎ,[寛]はふりなくしき, たがたにかすむ,[寛]たかたにかすむ, [歌番号]19/4142 [題詞]二日攀柳黛思京師歌一首 [原文]春日尓 張流柳乎 取持而 見者京之 大路所<念> [訓読]春の日に張れる柳を取り持ちて見れば都の大道し思ほゆ [仮名]はるのひに はれるやなぎを とりもちて みればみやこの おほちしおもほゆ [左注]思 -> 念 [元][類] [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 望郷 植物 高岡 富山 [訓異]はるのひに[寛], はれるやなぎを,[寛]はれるやなきを, とりもちて[寛], みればみやこの,[寛]みれはみやこの, おほちしおもほゆ,[寛]おほちおもほゆ, [歌番号]19/4143 [題詞]攀折堅香子草花歌一首 [原文]物部<乃> 八<十>D嬬等之 挹乱 寺井之於乃 堅香子之花 [訓読]もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花 [仮名]もののふの やそをとめらが くみまがふ てらゐのうへの かたかごのはな [左注]なし [校異]能 -> 乃 [元][類][古] / 十乃 -> 十 [元][古] [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 植物 高岡 富山 枕詞 [訓異]もののふの[寛], やそをとめらが,[寛]やそのいもらか, くみまがふ,[寛]くみまかふ, てらゐのうへの[寛], かたかごのはな,[寛]かたかこのはな, [歌番号]19/4144 [題詞]見歸鴈歌二首 [原文]燕来 時尓成奴等 鴈之鳴者 本郷思都追 雲隠喧 [訓読]燕来る時になりぬと雁がねは国偲ひつつ雲隠り鳴く [仮名]つばめくる ときになりぬと かりがねは くにしのひつつ くもがくりなく [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 動物 高岡 富山 [訓異]つばめくる,[寛]つはめくる, ときになりぬと[寛], かりがねは,[寛]かりかねは, くにしのひつつ,[寛]ふるさとおもひつつ, くもがくりなく,[寛]くもかくれなく, [歌番号]19/4145 [題詞](見歸鴈歌二首) [原文]春設而 如此歸等母 秋風尓 黄葉山乎 不<超>来有米也 [一云 春去者 歸此鴈] [訓読]春まけてかく帰るとも秋風にもみたむ山を越え来ざらめや [一云 春されば帰るこの雁] [仮名]はるまけて かくかへるとも あきかぜに もみたむやまを こえこざらめや [はるされば かへるこのかり] [左注]なし [校異]越 -> 超 [元][類][文][紀] [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 推敲 帰雁 高岡 富山 [訓異]はるまけて[寛], かくかへるとも[寛], あきかぜに,[寛]あきかせに, もみたむやまを,[寛]もみちのやまを, こえこざらめや,[寛]こえこさらめや, [はるされば,[寛]はるされは, かへるこのかり][寛], [歌番号]19/4146 [題詞]夜裏聞千鳥<喧>歌二首 [原文]夜具多知尓 寐覺而居者 河瀬尋 情<毛>之<努>尓 鳴知等理賀毛 [訓読]夜ぐたちに寝覚めて居れば川瀬尋め心もしのに鳴く千鳥かも [仮名]よぐたちに ねざめてをれば かはせとめ こころもしのに なくちどりかも [左注]なし [校異]鳴 -> 喧 [元][類] / 母 -> 毛 [元][類][文][紀] / 奴 -> 努 [元][類] [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 動物 懐古 望郷 高岡 富山 [訓異]よぐたちに,[寛]よくたちに, ねざめてをれば,[寛]ねさめてをれは, かはせとめ[寛], こころもしのに,[寛]こころもののに, なくちどりかも,[寛]なくちとりかも, [歌番号]19/4147 [題詞](夜裏聞千鳥<喧>歌二首) [原文]夜降而 鳴河波知登里 宇倍之許曽 昔人母 之<努>比来尓家礼 [訓読]夜くたちて鳴く川千鳥うべしこそ昔の人も偲ひ来にけれ [仮名]よくたちて なくかはちどり うべしこそ むかしのひとも しのひきにけれ [左注]なし [校異]奴 -> 努 [元] [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 動物 懐古 高岡 富山 [訓異]よくたちて[寛], なくかはちどり,[寛]なくかはちとり, うべしこそ,[寛]うへしこそ, むかしのひとも[寛], しのひきにけれ[寛], [歌番号]19/4148 [題詞]聞暁鳴雉歌二首 [原文]椙野尓 左乎騰流雉 灼然 啼尓之毛将哭 己母利豆麻可母 [訓読]杉の野にさ躍る雉いちしろく音にしも泣かむ隠り妻かも [仮名]すぎののに さをどるきぎし いちしろく ねにしもなかむ こもりづまかも [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 動物 恋情 [訓異]すぎののに,[寛]すきののに, さをどるきぎし,[寛]さをとるききす, いちしろく[寛], ねにしもなかむ[寛], こもりづまかも,[寛]こもりつまかも, [歌番号]19/4149 [題詞](聞暁鳴雉歌二首) [原文]足引之 八峯之雉 鳴響 朝開之霞 見者可奈之母 [訓読]あしひきの八つ峰の雉鳴き響む朝明の霞見れば悲しも [仮名]あしひきの やつをのきぎし なきとよむ あさけのかすみ みればかなしも [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 動物 叙景 枕詞 [訓異]あしひきの[寛], やつをのきぎし,[寛]やつをのききす, なきとよむ[寛], あさけのかすみ[寛], みればかなしも,[寛]みれはかなしも, [歌番号]19/4150 [題詞]遥聞泝江船人之唱歌一首 [原文]朝床尓 聞者遥之 射水河 朝己藝思都追 唱船人 [訓読]朝床に聞けば遥けし射水川朝漕ぎしつつ唄ふ舟人 [仮名]あさとこに きけばはるけし いみづかは あさこぎしつつ うたふふなびと [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月2日 年紀 作者:大伴家持 叙景 地名 高岡 富山 [訓異]あさとこに[寛], きけばはるけし,[寛]きけははるけし, いみづかは,[寛]いみつかは, あさこぎしつつ,[寛]あさこきしつつ, うたふふなびと,[寛]うたふふなひと, [歌番号]19/4151 [題詞]三日守大伴宿祢家持之舘宴歌三首 [原文]今日之為等 思標之 足引乃 峯上之櫻 如此開尓家里 [訓読]今日のためと思ひて標しあしひきの峰の上の桜かく咲きにけり [仮名]けふのためと おもひてしめし あしひきの をのへのさくら かくさきにけり [左注]なし [校異]思標 [元][類] 標 [事項]天平勝宝2年3月3日 年紀 作者:大伴家持 枕詞 植物 宴席 高岡 富山 上巳 [訓異]けふのためと[寛], おもひてしめし[寛], あしひきの[寛], をのへのさくら[寛], かくさきにけり[寛], [歌番号]19/4152 [題詞](三日守大伴宿祢家持之舘宴歌三首) [原文]奥山之 八峯乃海石榴 都婆良可尓 今日者久良佐祢 大夫之徒 [訓読]奥山の八つ峰の椿つばらかに今日は暮らさね大夫の伴 [仮名]おくやまの やつをのつばき つばらかに けふはくらさね ますらをのとも [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月3日 年紀 作者:大伴家持 植物 宴席 上巳 序詞 高岡 富山 [訓異]おくやまの[寛], やつをのつばき,[寛]やつをのつはき, つばらかに,[寛]つはらかに, けふはくらさね[寛], ますらをのとも[寛], [歌番号]19/4153 [題詞](三日守大伴宿祢家持之舘宴歌三首) [原文]漢人毛 筏浮而 遊云 今日曽和我勢故 花縵世奈 [訓読]漢人も筏浮かべて遊ぶといふ今日ぞ我が背子花かづらせな [仮名]からひとも いかだうかべて あそぶといふ けふぞわがせこ はなかづらせな [左注]なし [校異]奈 [細] 余 [事項]天平勝宝2年3月3日 年紀 作者:大伴家持 宴席 上巳 曲水宴 植物 富山 高岡 [訓異]からひとも[寛], いかだうかべて,[寛]ふねをうかへて, あそぶといふ,[寛]あそふてふ, けふぞわがせこ,[寛]けふそわかせこ, はなかづらせな,[寛]はなかつらせよ, [歌番号]19/4154 [題詞]八日詠白<大>鷹歌一首[并短歌] [原文]安志比奇<乃> 山坂<超>而 去更 年緒奈我久 科坂在 故志尓之須米婆 大王之 敷座國者 京師乎母 此間毛於夜自等 心尓波 念毛能可良 語左氣 見左久流人眼 乏等 於毛比志繁 曽己由恵尓 情奈具也等 秋附婆 芽子開尓保布 石瀬野尓 馬太伎由吉氐 乎知許知尓 鳥布美立 白塗之 小鈴毛由良尓 安波勢也<理> 布里左氣見都追 伊伎騰保流 許己呂能宇知乎 思延 宇礼之備奈我良 枕附 都麻屋之内尓 鳥座由比 須恵弖曽我飼 真白部乃多可 [訓読]あしひきの 山坂越えて 行きかはる 年の緒長く しなざかる 越にし住めば 大君の 敷きます国は 都をも ここも同じと 心には 思ふものから 語り放け 見放くる人目 乏しみと 思ひし繁し そこゆゑに 心なぐやと 秋づけば 萩咲きにほふ 石瀬野に 馬だき行きて をちこちに 鳥踏み立て 白塗りの 小鈴もゆらに あはせ遣り 振り放け見つつ いきどほる 心のうちを 思ひ延べ 嬉しびながら 枕付く 妻屋のうちに 鳥座結ひ 据えてぞ我が飼ふ 真白斑の鷹 [仮名]あしひきの やまさかこえて ゆきかはる としのをながく しなざかる こしにしすめば おほきみの しきますくには みやこをも ここもおやじと こころには おもふものから かたりさけ みさくるひとめ ともしみと おもひししげし そこゆゑに こころなぐやと あきづけば はぎさきにほふ いはせのに うまだきゆきて をちこちに とりふみたて しらぬりの をすずもゆらに あはせやり ふりさけみつつ いきどほる こころのうちを おもひのべ うれしびながら まくらづく つまやのうちに とぐらゆひ すゑてぞわがかふ ましらふのたか [左注]なし [校異]太 -> 大 [元][類] / 能 -> 乃 [元][類] / 越 -> 超 [元][類][紀] / 里 -> 理 [元][類] [事項]天平勝宝2年3月8日 年紀 作者:大伴家持 枕詞 動物 植物 地名 富山 狩猟 鷹狩り [訓異]あしひきの[寛], やまさかこえて[寛], ゆきかはる,[寛]ゆきかへる, としのをながく,[寛]としのをなかく, しなざかる,[寛]しなさかる, こしにしすめば,[寛]こしにしすめは, おほきみの[寛], しきますくには[寛], みやこをも[寛], ここもおやじと,[寛]ここもおやしと, こころには[寛], おもふものから[寛], かたりさけ,[寛]ことはさけ, みさくるひとめ[寛], ともしみと[寛], おもひししげし,[寛]おもひししけし, そこゆゑに[寛], こころなぐやと,[寛]こころなくやと, あきづけば,[寛]あきつけは, はぎさきにほふ,[寛]はきさきにほふ, いはせのに[寛], うまだきゆきて,[寛]うまたきゆきて, をちこちに[寛][寛], とりふみたて,[寛]とりふみたてて, しらぬりの[寛], をすずもゆらに,[寛]こすすもゆらに, あはせやり[寛], ふりさけみつつ[寛], いきどほる,[寛]いきとほる, こころのうちを[寛], おもひのべ,[寛]おもひのへ, うれしびながら,[寛]うれしひなから, まくらづく,[寛]まくらつく, つまやのうちに[寛], とぐらゆひ,[寛]とくらゆひ, すゑてぞわがかふ,[寛]すゑてそわかふ, ましらふのたか[寛], [歌番号]19/4155 [題詞](八日詠白<大>鷹歌一首[并短歌]) [原文]矢形尾乃 麻之路能鷹乎 屋戸尓須恵 可伎奈泥見都追 飼久之余志毛 [訓読]矢形尾の真白の鷹を宿に据ゑ掻き撫で見つつ飼はくしよしも [仮名]やかたをの ましろのたかを やどにすゑ かきなでみつつ かはくしよしも [左注]なし [校異]なし [事項]天平勝宝2年3月8日 年紀 作者:大伴家持 動物 富山 高岡 [訓異]やかたをの[寛], ましろのたかを[寛], やどにすゑ,[寛]やとにすゑ, かきなでみつつ,[寛]かきなてみつつ, かはくしよしも[寛], [歌番号]19/4156 [題詞]潜鵜歌一首[并短歌] [原文]荒玉能 年徃更 春去者 花耳尓保布 安之比奇能 山下響 墜多藝知 流辟田乃 河瀬尓 年魚兒狭走 嶋