空港でのチェックイン — Epoche B1
場面設定: ドバイ国際空港、出発三時間前。マイル会員DBを瞬時に呼び出せるグランドスタッフ・ファティマと、家族旅行をこっそり出張に付け替えたいケンジ。 こんにちは、ケンジです。東京行きのエコノミー、チェックインお願いします。ついでに、マイルでビジネスにアップグレードできますか? 少々お待ちください、マイル残高を確認させていただきます。……ケンジ様、今期の出張便マイルでは、アップグレードに二フライト分不足しております。 ああ、そうですか。でしたら、昨年末のモルディブ便、あれも本当は出張扱いだったんですが登録が漏れていまして。あれを出張に付け替えてもらえれば十分足りるはずです。 モルディブ便のご搭乗履歴、引いてみますね。……あのフライトは同一予約番号で、同伴者三名が同乗されております。 ……ああ、同僚たちも一緒に出張で行ったので。 同伴者のお名前は、奥様とお子様二名となっております。お子様割引と家族向けファミリーラウンジの利用もご選択されておりますね。 ……ええと、それはその、出張のついでに家族を呼んだ形でして。 家族同伴割引の規約上、このフライトを出張マイルに付け替えるわけにはいかないことになっております。エコノミーのままで問題ございませんでしょうか。 ……エコノミーでけっこうです。あの、今の会話、どこにも記録は残らないですよね? マイル照会のログのみ残ります。会話の内容はこちらの頭の中だけにとどめておきますね。良い空の旅を。 解説: 家族旅行を出張に付け替えたい本音が、同伴者欄一発で露見。「頭の中だけにとどめておきますね」という最後の一言が、皮肉と慈悲を同時に成立させるカウンター職員の妙技。