帰化申請の手続き — Epoche C1
場面設定: 新宿の行政書士事務所応接室。行政書士田中は専門家側、19年在留のアリは申請者側で文化的不安を抱えた立場。 田中先生、本日はお忙しいところお時間を頂戴し、誠にありがとうございます。日本に19年住み、ようやく帰化申請の決意を固めましたので、正式にご相談させていただきたく参りました。 アリ様、ご来所いただき光栄です。数字を踏まえてお話しさせていただきます。2023年の帰化許可率は全体で79.4%、パキスタン籍の方は67.2%と、平均を下回る傾向がございます。 12ポイントの差ですね。率直にその原因をお聞きしてもよろしいでしょうか。 私どもの事務所の統計によれば、不許可の主因は三つ。第一に住民税滞納履歴が38%、第二に家族構成書類の不備が29%、第三に保証人選定の問題が17%です。書類面での対応が大半を占めております。 税金はもちろん全額完納しております。ただ、家族構成書類と保証人については不安がございます。 アリ様、ここで私自身の過去を正直に申し上げねばなりません。2019年、あるバングラデシュ籍の申請者を担当した際、私は家族構成書類の瑕疵を指摘できずに提出し、結果として不許可となりました。 田中先生、そのようなご経験が。具体的にはどのような瑕疵を。 本国の兄弟姉妹の記載漏れでした。依頼人が「兄弟は問題ない」と述べたため、私は追跡確認を怠りました。本音を申し上げると、ウルドゥー語・ベンガル語の書類照会が煩雑で、無意識に回避していたのです。行政書士として、構造的に言語障壁を依頼人の不利益に転嫁する装置となっていたと言わざるを得ません。 告白に敬意を表します。その反省を踏まえ、今回は私にどのような対応をお考えでしょうか。 三本柱を提案いたします。第一に申請書43項目チェックリスト(ウルドゥー語・英語併記で家族構成の全件確認)、第二に地域日本人保証人ネットワーク(新宿区の長期在留外国人支援会から三名紹介)、第三に不許可時の再申請プロトコル(理由分析から再提出までを六ヶ月で完結)です。 第二の保証人ネットワークは心強く存じます。日本人の知人はおりますが、保証人を正式に依頼することに文化的障壁を感じておりました。 その障壁は、多くの外国人申請者が直面する構造的問題です。ネットワーク化により、個人的関係に依拠せず、制度として保証人を依頼できる仕組みを用意させていただきたい。さらに、貴方の事例を踏まえ、本ネットワークを新宿区外にも拡大する次第です。 田中先生、受け入れざるを得ません、いや心より光栄に存じます。私個人の帰化が、今後の長期在留者全体の手続き改善に繋がる次第、重い責任を感じさせていただきます。 アリ様、19年間日本で築かれた生活の集大成を、私も最大の責任感で支えさせていただきます。来週から書類作成に着手し、12月の申請を目指しましょう。共に歩ませてください。 解説: 本音の漏れの型。専門家が過去の失敗事例と言語回避の無意識を告白し、申請者個人の手続きが在留外国人全体の制度改善に転化する。専門家責任の射程拡大が落ち。