Man'yōshū, Volume 11 — Ōtomo no Yakamochi
万葉集/第十一巻 ← 第十巻 第十二巻 → 万葉集 第十一巻 第十一巻 [歌番号] 11/2351 [題詞]旋頭歌 [原文]新室 壁草苅邇 御座給根 草如 依逢未通女者 公随 [訓読]新室の壁草刈りにいましたまはね草のごと寄り合ふ娘子は君がまにまに [仮名]にひむろの かべくさかりに いましたまはね くさのごと よりあふをとめは きみがまにまに [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]歌 [西] 謌 [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 野遊び 旋頭歌 求婚 [訓異]にひむろの[寛], かべくさかりに,[寛]かへくさかりに, いましたまはね,[寛]みましたまはね, くさのごと,[寛]くさのこと, よりあふをとめは[寛], きみがまにまに,[寛]きみかまにまに, [歌番号] 11/2352 [題詞](旋頭歌) [原文]新室 踏静子之 手玉鳴裳 玉如 所照公乎 内等白世 [訓読]新室を踏み鎮む子が手玉鳴らすも玉のごと照らせる君を内にと申せ [仮名]にひむろを ふみしづむこが ただまならすも たまのごと てらせるきみを うちにとまをせ [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 求婚 新室ほが媿 祝媿 旋頭歌 [訓異]にひむろを,[寛]にひむろの, ふみしづむこが,[寛]ふむしつのこし, ただまならすも,[寛]たたまならしも, たまのごと,[寛]たまのこと, てらせるきみを,[寛]てりたるきみを, うちにとまをせ[寛], [歌番号] 11/2353 [題詞](旋頭歌) [原文]長谷 弓槻下 吾隠在妻 赤根刺 所光月夜邇 人見點鴨 [一云 人見豆良牟可] [訓読]泊瀬の斎槻が下に我が隠せる妻あかねさし照れる月夜に人見てむかも [一云 人見つらむか] [仮名]はつせの ゆつきがしたに わがかくせるつま あかねさし てれるつくよに ひとみてむかも [ひとみつらむか] [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 旋頭歌 隠妻 枕詞 奈良 植物 地名 [訓異]はつせの[寛], ゆつきがしたに,[寛]ゆつきかしたに, わがかくせるつま,[寛]わかかくせるつま, あかねさし[寛], てれるつくよに,[寛]てれるつきよに, ひとみてむかも[寛], [ひとみつらむか][寛], [歌番号] 11/2354 [題詞](旋頭歌) [原文]健男之 念乱而 隠在其妻 天地 通雖<光> 所顕目八方 [一云 大夫乃 思多鶏備弖] [訓読]ますらをの思ひ乱れて隠せるその妻天地に通り照るともあらはれめやも [一云 ますらをの思ひたけびて] [仮名]ますらをの おもひみだれて かくせるそのつま あめつちに とほりてるとも あらはれめやも [ますらをの おもひたけびて] [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]先 -> 光 [文][紀][温] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 旋頭歌 隠妻 恋情 [訓異]ますらをの[寛], おもひみだれて,[寛]おもひみたれて, かくせるそのつま[寛], あめつちに,[寛]あめつちの, とほりてるとも,[寛]かよひてるとも, あらはれめやも[寛], [ますらをの[寛], おもひたけびて],[寛]おもひたけひて, [歌番号] 11/2355 [題詞](旋頭歌) [原文]恵得 吾念妹者 早裳死耶 雖生 吾邇應依 人云名國 [訓読]愛しと我が思ふ妹は早も死なぬか生けりとも我れに寄るべしと人の言はなくに [仮名]うつくしと あがおもふいもは はやもしなぬか いけりとも われによるべしと ひとのいはなくに [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 旋頭歌 恋情 [訓異]うつくしと,[寛]めくまむと, あがおもふいもは,[寛]わかおもふいもは, はやもしなぬか,[寛]はやくもしねや, いけりとも[寛], われによるべしと,[寛]われによるへしと, ひとのいはなくに[寛], [歌番号] 11/2356 [題詞](旋頭歌) [原文]狛錦 紐片<叙> 床落邇祁留 明夜志 将来得云者 取置<待> [訓読]高麗錦紐の片方ぞ床に落ちにける明日の夜し来なむと言はば取り置きて待たむ [仮名]こまにしき ひものかたへぞ とこにおちにける あすのよし きなむといはば とりおきてまたむ [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]釼 -> 叙 [嘉][文][紀] / 得 -> 待 [嘉][文][紀] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 旋頭歌 比喩 女歌 恋情 [訓異]こまにしき[寛], ひものかたへぞ,[寛]ひものかたへそ, とこにおちにける[寛], あすのよし[寛], きなむといはば,[寛]きなむといはは, とりおきてまたむ[寛], [歌番号] 11/2357 [題詞](旋頭歌) [原文]朝戸出 公足結乎 閏露原 早起 出乍吾毛 裳下閏奈 [訓読]朝戸出の君が足結を濡らす露原早く起き出でつつ我れも裳裾濡らさな [仮名]あさとでの きみがあゆひを ぬらすつゆはら はやくおき いでつつわれも もすそぬらさな [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 旋頭歌 恋情 後朝 [訓異]あさとでの,[寛]あさといての, きみがあゆひを,[寛]きみかあゆひを, ぬらすつゆはら[寛], はやくおき,[寛]はやくおきて, いでつつわれも,[寛]いてつつわれも, もすそぬらさな,[寛]ものすそぬれな, [歌番号] 11/2358 [題詞](旋頭歌) [原文]何為 命本名 永欲為 雖生 吾念妹 安不相 [訓読]何せむに命をもとな長く欲りせむ生けりとも我が思ふ妹にやすく逢はなくに [仮名]なにせむに いのちをもとな ながくほりせむ いけりとも あがおもふいもに やすくあはなくに [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 旋頭歌 恋情 [訓異]なにせむに,[寛]なにせんに, いのちをもとな[寛], ながくほりせむ,[寛]なかくほりせむ, いけりとも[寛], あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに, やすくあはなくに[寛], [歌番号] 11/2359 [題詞](旋頭歌) [原文]息緒 吾雖念 人目多社 吹風 有數々 應相物 [訓読]息の緒に我れは思へど人目多みこそ吹く風にあらばしばしば逢ふべきものを [仮名]いきのをに われはおもへど ひとめおほみこそ ふくかぜに あらばしばしば あふべきものを [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 旋頭歌 [訓異]いきのをに[寛], われはおもへど,[寛]われにおもへと, ひとめおほみこそ[寛], ふくかぜに,[寛]ふくかせの, あらばしばしば,[寛]あらはしはしは, あふべきものを,[寛]あふへきものを, [歌番号] 11/2360 [題詞](旋頭歌) [原文]人祖 未通女兒居 守山邊柄 朝々 通公 不来哀 [訓読]人の親処女児据ゑて守山辺から朝な朝な通ひし君が来ねば悲しも [仮名]ひとのおや をとめこすゑて もるやまへから あさなさな かよひしきみが こねばかなしも [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 旋頭歌 序詞 [訓異]ひとのおや,[寛]ひとのおやの, をとめこすゑて[寛], もるやまへから[寛], あさなさな,[寛]あさなあさな, かよひしきみが,[寛]かよひしきみか, こねばかなしも,[寛]こぬはかなしも, [歌番号] 11/2361 [題詞](旋頭歌) [原文]天在 一棚橋 何将行 穉草 妻所云 足<壮>嚴 [訓読]天なる一つ棚橋いかにか行かむ若草の妻がりと言はば足飾りせむ [仮名]あめなる ひとつたなはし いかにかゆかむ わかくさの つまがりといはば あしかざりせむ [左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]牡 -> 壮 [嘉][紀][温][矢] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 旋頭歌 恋情 [訓異]あめなる,[寛]あめにある, ひとつたなはし[寛], いかにかゆかむ,[寛]いかてゆくらむ, わかくさの[寛], つまがりといはば,[寛]つまかりといふ, あしかざりせむ,[寛]あしをうつくし, [歌番号] 11/2362 [題詞](旋頭歌) [原文]開木代 来背若子 欲云余 相狭丸 吾欲云 開木代来背 [訓読]山背の久背の若子が欲しと言ふ我れあふさわに我れを欲しと言ふ山背の久世 [仮名]やましろの くせのわくごが ほしといふわれ あふさわに われをほしといふ やましろのくぜ [左注]右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出 [校異]歌 [西] 謌 [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 地名 京都 求婚 旋頭歌 [訓異]やましろの[寛], くせのわくごが,[寛]くせのわかこか, ほしといふわれ[寛], あふさわに[寛], われをほしといふ,[寛]わかほしといふ, やましろのくぜ,[寛]やましろのくせ, [歌番号] 11/2363 [題詞](旋頭歌) [原文]岡前 多未足道乎 人莫通 在乍毛 公之来 曲道為 [訓読]岡の崎廻みたる道を人な通ひそありつつも君が来まさむ避き道にせむ [仮名]をかのさき たみたるみちを ひとなかよひそ ありつつも きみがきまさむ よきみちにせむ [左注](右五首古歌集中出) [校異]なし [事項]古歌集 旋頭歌 恋情 [訓異]をかのさき,[寛]をかさきの, たみたるみちを,[寛]をみたるみちを, ひとなかよひそ[寛], ありつつも[寛], きみがきまさむ,[寛]きみかきまさむ, よきみちにせむ[寛], [歌番号] 11/2364 [題詞](旋頭歌) [原文]玉垂 小簾之寸鶏吉仁 入通来根 足乳根之 母我問者 風跡将申 [訓読]玉垂の小簾のすけきに入り通ひ来ねたらちねの母が問はさば風と申さむ [仮名]たまだれの をすのすけきに いりかよひこね たらちねの ははがとはさば かぜとまをさむ [左注](右五首古歌集中出) [校異]なし [事項]古歌集 恋情 勧誘 旋頭歌 [訓異]たまだれの,[寛]たまたれの, をすのすけきに,[寛]こすのすけきに, いりかよひこね,[寛]いりかよひきね, たらちねの[寛], ははがとはさば,[寛]ははかとはれは, かぜとまをさむ,[寛]かせとまうさむ, [歌番号] 11/2365 [題詞](旋頭歌) [原文]内日左須 宮道尓相之 人妻<姤> 玉緒之 念乱而 宿夜四曽多寸 [訓読]うちひさす宮道に逢ひし人妻ゆゑに玉の緒の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き [仮名]うちひさす みやぢにあひし ひとづまゆゑに たまのをの おもひみだれて ぬるよしぞおほき [左注](右五首古歌集中出) [校異]垢 -> 姤 [嘉][文][細] [事項]古歌集 旋頭歌 恋情 枕詞 [訓異]うちひさす[寛], みやぢにあひし,[寛]みやちにあへりし, ひとづまゆゑに,[寛]ひとつまゆゑに, たまのをの[寛], おもひみだれて,[寛]おもひみたれて, ぬるよしぞおほき,[寛]ぬるよしそおほき, [歌番号] 11/2366 [題詞](旋頭歌) [原文]真十鏡 見之賀登念 妹相可聞 玉緒之 絶有戀之 繁比者 [訓読]まそ鏡見しかと思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ [仮名]まそかがみ みしかとおもふ いももあはぬかも たまのをの たえたるこひの しげきこのころ [左注](右五首古歌集中出) [校異]なし [事項]古歌集 枕詞 旋頭歌 恋情 [訓異]まそかがみ,[寛]まそかかみ, みしかとおもふ[寛], いももあはぬかも,[寛]いもにあはむかも, たまのをの[寛], たえたるこひの[寛], しげきこのころ,[寛]しけきこのころ, [歌番号] 11/2367 [題詞](旋頭歌) [原文]海原乃 路尓乗哉 吾戀居 大舟之 由多尓将有 人兒由恵尓 [訓読]海原の道に乗りてや我が恋ひ居らむ大船のゆたにあるらむ人の子ゆゑに [仮名]うなはらの みちにのりてや あがこひをらむ おほぶねの ゆたにあるらむ ひとのこゆゑに [左注]右五首古歌集中出 [校異]歌 [西] 謌 [事項]古歌集 旋頭歌 恋情 枕詞 [訓異]うなはらの[寛], みちにのりてや[寛], あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ, おほぶねの,[寛]おほふねの, ゆたにあるらむ[寛], ひとのこゆゑに[寛], [歌番号] 11/2368 [題詞]正述心緒 [原文]垂乳根乃 母之手放 如是許 無為便事者 未為國 [訓読]たらちねの母が手離れかくばかりすべなきことはいまだせなくに [仮名]たらちねの ははがてはなれ かくばかり すべなきことは いまだせなくに [左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 非略体 枕詞 恋情 [訓異]たらちねの[寛], ははがてはなれ,[寛]ははのてそきて, かくばかり,[寛]かくはかり, すべなきことは,[寛]すへなきことは, いまだせなくに,[寛]いまたせなくに, [歌番号] 11/2369 [題詞](正述心緒) [原文]人所寐 味宿不寐 早敷八四 公目尚 欲嘆 [或本歌云 公矣思尓 暁来鴨] [訓読]人の寝る味寐は寝ずてはしきやし君が目すらを欲りし嘆かむ [或本歌云 君を思ふに明けにけるかも] [仮名]ひとのぬる うまいはねずて はしきやし きみがめすらを ほりしなげかむ [きみをおもふに あけにけるかも] [左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 [訓異]ひとのぬる[寛], うまいはねずて,[寛]うまいもねすて, はしきやし[寛], きみがめすらを,[寛]きみかめをすら, ほりしなげかむ,[寛]ほしみなけくか, [きみをおもふに[寛], あけにけるかも][寛], [歌番号] 11/2370 [題詞](正述心緒) [原文]戀死 戀死耶 玉鉾 路行人 事告<無> [訓読]恋ひしなば恋ひも死ねとや玉桙の道行く人の言も告げなく [仮名]こひしなば こひもしねとや たまほこの みちゆくひとの こともつげなく [左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出